手元にある一枚の布を、どこから来たのか考えたことがあっただろうか。着るものを選ぶときは色や柄に目が行くばかりで、その布がどんな手を経てここまで来たのかを想像したことは、これまでほとんどなかった。祖母から譲り受けた着物も、ただ「古いもの」としてしまい込んでいるだけだった。
日本民藝館の特別展「琉球王国の染織」の紹介文を読んで、その怠慢に気づかされた。
当館の沖縄染織コレクションは、戦前の那覇の古着市などで購入した、庶民の生活に根差す染織品が所蔵される一方で、王族や上級士族が対象の衣裳も含まれています。
——日本民藝館「特別展」ページより(https://mingeikan.or.jp/exhibition/special/)
同じ棚に、市井の暮らしから来た布と、王族の衣裳が並んでいる。しかもその来歴は長らく検証されておらず、近年の調査でようやく約50点が民藝運動の協力者・水谷良一の寄贈品であり、そのうち30点ほどが琉球王族・尚家の流れを引く護得久朝章の旧蔵だとわかったのだという。布そのものは何も語らない。語るのは、誰が持ち、誰が譲り、誰が今それを見ているかという、人の連なりのほうだ。
柄や色を先に見てしまう自分の癖を、少し反省した。次に古い布に触れるときは、まず「これはどこから来たのか」を先に見てみたい。祖母の着物も、いつか来歴を尋ねてみようと思う。
会期:2026年8月22日(土)〜11月3日(火・祝)/会場:日本民藝館(東京都目黒区駒場4-3-33)/入館料:1,500円(団体1,300円)/10月17日(土)には記念講演会も開催予定。詳細は日本民藝館公式サイトにて。